子どもの保護者に気をつけてほしいことがあります。それは、子どもの目の前で話す内容に気をつけて欲しいという事です。
以前、私が教員をしている時のことです。家庭訪問をした時に、その家の子どもも母親と同席しました。子どもの同席は求めてはいませんでした。その時に、その母親は目の前にいる子どものことを、実に丁寧に話し始めました。「朝起きるのが遅いこと」「宿題を忘れること」「片付けが出来ないこと」などでした。私に聞いてもらい、注意をして欲しかったようです。が、このお母さんの話が子どもの欠点に集中していくのを感じた私は、子どもに言いました。「お母さんと話をするのでお部屋に行っていていいよ」
このお母さんは子どものことで話を聞いて欲しかったのでしょう。担任ですからそのような機会があってもおかしくはありません。しかし、子ども本人を前にして、話すことなのでしょうか。第三者である私に、包み隠すことなく自分の欠点が伝えられていることを聞く本人の気持ちはどうでしょう。親は、何とかして子どもが良い方向に成長して欲しいと願っているのです。が、この場面では、子どもの自尊心はズタズタに傷ついていたのではないでしょうか。知らず知らずのうちに親が子どもの自尊心を傷つけていることがあるのかも知れません。
子どもの気持ちに敏感でありたいものです。子どもが出す色々なメッセージをしっかりと受け止めて、適切に対応していきたいのです。自分の心配を、子どもにぶつけてはいけません。子どもの目の前で親が心の内側をさらけ出してはいけない時があるのです。まして、子どもの目の前で、第三者に子どもの問題をさらけ出していいはずがありません。子どもの自尊心は大変に弱くもろいものです。一度、自尊心を損なってしまったとしたら、それを修復するのには大変な時間とエネルギーを使うことになるということを知ってほしいのです。